2014年8月12日火曜日

一部の国は財政改革ができる

金融市場で、唯一の劇的なニュースとなったのは、アメリカでのサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)や、複雑な信用リスク取引であるクレジットーデリバティブの破綻により、欧米や一部アジアの銀行が、巨額の損失を計上したことだった。ストロスカーン氏が、財政出動を呼びかけた。週間前、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は、一九八四年以降で最大となる利下げに踏み切り、その後、多くの追加利下げを行っている。

しかし、IMFの長がきわめて時期尚早な介入の発言を行ったかもしれないが、一部の国の政府は、積極的に反応したのである。アメリカでは、議会とホワイトハウスが、一六八〇億ドルに上る経済刺激法をとりまとめた。また、インドのチダムバラム財政相は、同国には追加的財政出動をする余地があると発言したと報道されている。ヨーロッパでは、フランスとイタリアの政治家が、IMFにすばやく同調し、それぞれの政府にいっそうの金融緩和を迫った。

だが、果たしてストロスカーン氏は正しいのだろうか。世界経済を急成長させるために、減税し、政府支出の増大を図ることは、みんなに正しい政策といえるだろうか。一般的に言えば、正しくないだろう。原油や金属、それに小麦の価格の高騰が示したように、彼が主張しか当時、世界全体での需要は過剰であり過少ではなかった。財政出動は、需要の拡大を必要とするときにのみ、正しいのだ。

一部の国で景気後退が予想されているが、それを和らげるため、財政政策が必要となるところも確かにあり、それがより広範に実行される時期がやってくるかもしれない。だがその国は、ストロスカーン氏の呼びかけに呼応した国の政治家でないことは、ほぼ確かである。たとえば、インドでは、政府予算の赤字がGDPの一〇%に急増しており、需要があまりにも旺盛なことから、消費者物価のインフレ率は、最近二%を超えている。

日本も、その国に入るかもしれない。というのは、財政赤字が、国内需賢が慢性的に弱く、そのうえ、米ドルに対する円高が、大安をいっそう減退させるからだ。日本政府は、財政赤字を削減するため、増税をいつ行うかについて議論を交わしているが、このような議論は終わらせるべきである。その代わり、財政出動が経済成長を促すかどうかの議論を始めるべきだ。だが、この場合、減税をすべきであり、一九九〇年代に見られたような公共工事支出であってはならない。