2014年12月10日水曜日

低賃金から抜け出せない

文章を書くのはライターさんがやりますし、必要に応じてカメラマン、イラストレーター、漫画家だとか、各分野の専門家に協力を仰ぎながら、記事を作っていくんです」彼のような編集者には、いいクリエイターを発掘して一緒に仕事をしたり、クリエイターのスケジュールを把握して、滞りなく記事を制作していくことが求められる。つまり外部とのやり取りが仕事の中心的な業務なのだ。しかし。「異動してきたばかりの頃は、もちろん外部のクリエイターとはまったく人脈のない状態。上司からは『自分で人を探してこい』つて指示を受けていたので、ネットを見てよさそうだなっていう人に声をかけたりしながら、『こんな人どうでしょう?』つて上司に提案してたんです。

そうしたら、よさそうな人は『俺が使うから』とか言って、上司が持っていっちやう。イマイチだと『なんだこいつは!ヘタクソだなあ。お前にやるよ』とか言って、私か担当になるんですよね。それもどうかと思うんですけど。私か担当になったライターさんに外注して記事を作ってもらうと、『全然ダメ。こいつにはもう頼んじやダメだ』つていうことになって、結局私の担当のライターさんがどんどんいなくなっちゃうんですよ。そんな状態なので、私の担当記事がどんどん減っていってます。他の編集者は月に100本、多い人はもっと作ってますが、私は今、月に10本~15本ぐらいしかアップできてません」求人情報サービス事業を手掛けるエン・ジャパン株式会社がサラリーマンにたいして行なった「仕事をしていて社外の人脈の必要性を感じますか?」というアンケートでは、79%が必要と回答している。

客先とのやり取りが一切ないバックオフィス系の仕事を除けば、取引先との関係が築けないと、うまく仕事を進められなくなってしまうことが分かる。彼らは決して、人と接するのが苦手だから孤立してしまっているわけではない。広告制作会社の朝倉さんのように、社内失業することで周囲との関係がうまくいかなくなってしまうこともあるし、ニュースサイト運営会社の太田さんのように「仕事に必要な人をなんとか集めたい」と積極的に外側に働きかけていても、社内失業していく過程で人脈を作れなくなったり、取り上げられてしまう状況があるのだ。

社内失業者は低賃金で苦しんでいる。そう言われても、あまりピンとこないかもしれない。「なにも仕事せずにお給料がもらえるんでしよ?それならむしろラッキーなんじやないの?ぜいたく言ってるんじやないよ」と。確かにもらえるだけマシ、という考え方もある。世の中には失業してしまったり、会社が倒産してしまって、食うや食わずの人たちがたくさんいる。社内失業者は、決してその日の食事や住むところに困っているわけではないからだ。しかし、社内失業者の不安は、今給与が低いことではない。今後上がる見込みがないまま年齢だけを重ねてしまう。その未来の暗さにあるのだ。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構がまとめた「今後の企業経営と賃金のあり方に関する調査」によると、5年前と比べて本人の年齢・勤続年数・学歴など個人の属性を重要視する「個人属性重視型」賃金タイプの企業が大幅に減り、本人の職務遂行能力を重視する「職能重視型」や、従事する職務・仕事の内容を重視する「職務重視型」などが増えているという。今は正社員として所属してさえいれば満足のいく給料をもらえるほど甘い世の中ではない。さらに、若い頃に経験を積めないことが、30代、40代以降の賃金にどう影響していくかについて、同調査は以下のように分析している。