2012年4月17日火曜日

底堅い紙価格、製紙各社の切迫感映す

「紙の卸価格の下がり方は、今までのパターンと違う」。都内の印刷会社社長は、昨年12月から今年2月の不需要期をこう振り返った。これまではいったん値下がりが始まると、値上げ交渉での値上がり幅をほぼ帳消しにするほど一気に下がることも珍しくなかった。しかし、今回の下落は限定的で底堅いという。

製紙各社は昨年7月に印刷用紙の出荷価格を10%値上げした。代理店(一次卸)や卸商(二次卸)も、印刷会社への卸価格を10%上げた。今年になって卸商の販売分を中心に1―3円の下落がみられたものの、それ以上の広がりはない。

代理店役員が理由を説明する。「製紙大手が需要家の値下げ要求に応じない」。製紙会社にとって、予想を超える原燃料高に見舞われている事態に加えて製品価格が下がるのは最悪のシナリオだからだ。

重油や石炭、古紙などの値上がりは経営に大きなショックを与えた。実際、王子製紙は22日、2008年3月期の連結経常利益見通しを470億円から381億円に下方修正すると発表した。そんなときに、どこか1社が値下げ取引に応じていけば、情報がすぐ市場に伝わり、市況悪化のスパイラルに陥る。

だから製紙会社は出荷価格を変えていない。値下げの余地は流通業者の口銭分にしかなく、市中価格の下落幅は抑えられる。今回、値下がりが広がらなかったところに、原燃料高の転嫁を急ぎたい製紙会社の切迫感がうかがえる。

製紙各社はさらに、5月下旬―6月1日出荷分から15%の値上げを代理店に表明した。再生紙偽装問題は消費者やユーザーに混乱を引き起こし、不信をまねいた。しかし、昨夏の値上げ以降に市中価格が横ばいで推移し続けてきた事情から推し量れば、製紙会社は今度もコスト転嫁の姿勢を強く打ち出してくるのは間違いない。

2012年4月10日火曜日

石化「2008年問題」じわり表面化

中東産油国が石油化学製品を増産し、東アジア市場の需給が大幅に緩むという石化の「2008年問題」。今春その兆しが表れた。石化原料エチレンの価格が暴落したのだ。

東アジアのエチレン価格は3月までの2カ月間に1トン1420ドルから1200ドルへ15%下がった。「これほど急な下げ方は極めてまれ」(商社)と業界関係者を驚かせた。

構図はこうだ。イランをはじめとする中東諸国で、エチレンの生産設備が年初から相次ぎ稼働。食品包装に使うポリエチレンなど石化製品の工場は未稼働のため、消費できないエチレンが東アジアに流れ込み需給を緩めた。

エチレンの値下がりを受け、韓国やインドネシアのエチレン工場は減産に着手。エチレン価格は現在持ち直している。中東の石化会社は油田から出るエタンガスでエチレンを造る。エタンガスは東アジアの石化各社が使うナフサ(粗製ガソリン)より大幅に安い。このためポリエチレンなど製品の価格競争力が格段に高まる。

イランやサウジアラビアではエチレン増産に続き、ポリエチレンやエチレングリコールなども「今秋には大増産が始まる」(商社)。

国内ポリエチレン大手の首脳は危機感をあらわにする。「中国の石化製品需要の拡大ペースが鈍るとされる五輪後、中東品が流入すれば値崩れが起きる」

もっとも国内各社はただ手をこまぬいているわけではない。自動車部材などになる高機能品の比率を高め、汎用的な中東品との競争を避けようと躍起になっている。商品力に磨きをかけ差別化できれば、日本の石化は国際市場で強みを増す。逆境を成長のステップにつなげられるか。2008年は正念場だ。

大手航空の株主優待券、「相場」は低空飛行

東京都内の金券ショップで、6月から利用できる大手航空会社の新しい株主優待券が並び始めた。民営化20周年で発行した日本航空(JAL)の優待券価格が、全日本空輸(ANA)に比べ安値で販売されている。

株主優待券は年に2回発行され、流通市場に出回る。国内線の全路線で片道の普通運賃が5割引きとなる。販売価格はJALが1枚6500―8000円、ANAが9000―9500円程度。ANAは昨年同時期とほぼ同値なのに対し、JALは1000円程度安く販売する店舗が見られる。

買い取り価格はJALで5500―6000円程度。新しい優待券が発売された当初は、買い取り価格より2000―3000円程度上乗せして、利益を稼ごうとする金券店が通常は多い。しかし、6500円で販売する店の利益はざっと500―1000円程度。「今年は記念優待券の発行でJALの供給量が増えたことから、1枚当たりの利益は少なくしても、販売数量で稼ごうという動きが出た」(金券店)。

販売価格を見ると、ANAがJALに比べ1000―3000円高く、「この価格水準ではほとんど売れない」(金券店)。荷余り感が強まり、JALの価格にさや寄せする形で今後値下がりするとみられている。
優待券の価格は、旅行や帰省需要が高まる7月後半から例年、値上がりする。ただ、店頭の中心価格をみると、現時点ではJALで8000円、ANAで9000円程度。金券店では「おおかたの店は、安売りすることで、儲けが減ることを恐れている」という。6500円などの安値が一部店舗のとどまれば、優待券販売量が伸びず、夏の需要期ごろになって価格競争が活発になる可能性もある。

金券ショップはハイウェイカードや紙の高速券がなくなるなど取り扱い品目が減っており、市場規模も縮小しつつある。航空会社の株主優待券は、残された数少ない利益商材のひとつ。JALの発行拡大による供給過剰が重しになっているが、価格の付け方次第で各社の利益を大きく左右するだけに、他店の動向をうかがいながら慎重に値付けをする傾向が強まっている。