2015年6月9日火曜日

医療費の自然増への対策

医療費が年々ふえるのは世界共通の現象である。この因子のひとつに医療技術の発達によるものがある。スウェーデンでは、医療技術の発達を医療に取り入れるためには、委員会を常設してたえず検討し、その結論を採用している。委員のなかには医療経済の専門家を入れ、医療経済の側面からプラスになるかどうかを重要項目としている。高度の医療技術だからといってただちに採用するようなことはしない。

たとえばESWLという機器がある。西ドイツで開発されたもので、体外から体内の結石を破砕するものである。開発当初は日本円で数億円もした。スウェーデンでは、開発当初から委員会でESWLの導入を検討したが、一九九〇年に導入を決定した。その理由は、これまでの胆石などの結石手術では一〇~二〇日間も入院したが、それが外来ですむということと、傷病手当金が二日間ですむというメリットがあり、高額機器を導入しても結果として安くっくということであった。全国で数力所の大病院に設置されている。この視点は日本でも考えるべき点と思われる。

現在、スウェーデンの入院患者の七〇パーセント以上が高齢者である。これが入院費や医療費の相当部分を占めている。これらの人々のなかには、たしかに病院での治療を必要とする人もいるが、多くが帰るところがなくて入院しているのは、日本と似ている。スウェーデンは核家族が多く、家族と同居している老人は二十パーセントにすぎない。これらの人々をナーシングセンターや在宅介護に移行させたいと考えている。

スウェーデンは二〇〇〇年には老齢化率が一七・ニパーセソトになり、そこから少し老齢化率は減りはじめる。しかし二〇〇〇年に五パーセントを占める後期老齢者(オールドーオールド)はふえていく。これらの人たちはどうしても″社会的入院”になりがちである。これをどのようにするかというのは結局のところ在宅介護以外に方法がない。

したがって介護費用は今後もふえるものと考えざるをえないが、入院するよりも在宅のほうが、はるかに費用は少なくてすむ。社会的入院の排除こそが社会保障のリフォームの目玉なのである。病院に入院すると一日三〇〇〇クローネかかるが、ナーシングホームは1000クローネである。在宅介護はもっと安い。この″流れ″をつくろうとしているわけである(患者負担の上限は年一六〇〇クローネ)。