2014年6月7日土曜日

腎症

通常の尿検査で尿蛋白が陽性となる以前に、尿中に非常に少量の蛋白(アルブミン)が排泄されるようになる(微量アルブミン尿)時期があることが明らかになり、早期腎症という概念が確立されてきています。さらに、微量アルブミン尿の出現と同時に、厳格な血糖および血圧の管理を行えば、尿中アルブミン排泄か低下し、腎症の進展を阻止できると報告されています。

このため、尿中アルブミンの測定は、糖尿病性腎症の早期発見の手段として広く用いられています。例17では一九八八年八月頃が早期腎症の時期にあたります。この時期に厳格な血糖と血圧のコントロールを行う必要がありましたか、代理受診のために時期を逃してしまい、腎不全へと進行してしまいました。

糖尿病性腎症の患者では、人工透析が必要となる時期か早く、糖尿病患者の急増に伴って人工透析をうける糖尿病患者も年々増えています。透析中の患者に占める糖尿病性腎症の割合は、一九八三年には七・四%でしたが、一九九五年には二〇・四%と急増しています。一九九六年に人工透析が導入された患者数は二万八二三四人、原因疾患の一位は慢性糸球体腎炎(一万九九五人、三八・九%)ですか、年々占有率が低下してきており、糖尿病性腎症の増加が目立ちます。近い将来逆転するのは間違いありません。

糖尿病では末梢神経(手足を動かす働きをする運動神経、熱い、冷たい、痛いなどと感じる働きをする知覚神経、臓器や器官の働きを調節する自律神経)がおかされます。糖尿病性神経障害は網膜症や腎症よりも早期に出現し、多彩な症状により患者に苦痛を与えます。厚生省か行った糖尿病患者二一二○名の合併症調査の報告では、糖尿病性末梢神経障害(しびれ、痛みなどの自覚症状、アキレス腱反射の低下、消失のいずれかのある患者)は三六%でした。アキレス腱反射の消失は糖尿病に特徴的な神経障害の所見です。