2012年4月10日火曜日

石化「2008年問題」じわり表面化

中東産油国が石油化学製品を増産し、東アジア市場の需給が大幅に緩むという石化の「2008年問題」。今春その兆しが表れた。石化原料エチレンの価格が暴落したのだ。

東アジアのエチレン価格は3月までの2カ月間に1トン1420ドルから1200ドルへ15%下がった。「これほど急な下げ方は極めてまれ」(商社)と業界関係者を驚かせた。

構図はこうだ。イランをはじめとする中東諸国で、エチレンの生産設備が年初から相次ぎ稼働。食品包装に使うポリエチレンなど石化製品の工場は未稼働のため、消費できないエチレンが東アジアに流れ込み需給を緩めた。

エチレンの値下がりを受け、韓国やインドネシアのエチレン工場は減産に着手。エチレン価格は現在持ち直している。中東の石化会社は油田から出るエタンガスでエチレンを造る。エタンガスは東アジアの石化各社が使うナフサ(粗製ガソリン)より大幅に安い。このためポリエチレンなど製品の価格競争力が格段に高まる。

イランやサウジアラビアではエチレン増産に続き、ポリエチレンやエチレングリコールなども「今秋には大増産が始まる」(商社)。

国内ポリエチレン大手の首脳は危機感をあらわにする。「中国の石化製品需要の拡大ペースが鈍るとされる五輪後、中東品が流入すれば値崩れが起きる」

もっとも国内各社はただ手をこまぬいているわけではない。自動車部材などになる高機能品の比率を高め、汎用的な中東品との競争を避けようと躍起になっている。商品力に磨きをかけ差別化できれば、日本の石化は国際市場で強みを増す。逆境を成長のステップにつなげられるか。2008年は正念場だ。